QR(クイックレスポンス)コードの悪用そのものは、目新しい発想ではありません。昨年、QR コードに埋め込まれた悪質な USSD コードによって、Android スマートフォンの人気機種でデータが消去される恐れがあると判明したケースを覚えている方もいらっしゃるでしょう。QR コードは何年も前から使われていますが、モバイル端末で読み取った場合、そのデータがどうなるのかユーザーにはまったくわかりません。
シマンテックは、QR コードによる悪質なサイトへの自動リダイレクトを防ぐために、ノートン スナップというアプリケーションを作成しました。リンク先アドレスにリダイレクトされる前に、その URL がスキャンされます。すでに、ユーザーから毎日数千件の URL ルックアップ要求が届いています。先月は、総数のうち悪質な URL が占める比率は 0.03% にすぎなかったため、まだ大きなリスクとは見なされていません。しかし、スナック自動販売機の QR コードが乗っ取られ、スナックの料金が別の場所に支払われてしまうというケースがすでに発生しています。
図. Google Glass と QR コード
見てはいけない
Google Glass は現在特に注目を集めているテクノロジのひとつであり、シマンテックの研究室でも調査目的で多くの Google Glass 端末を手に入れました。Google Glass と QR コードの関係について言えば、QR コードを使って設定は簡単になります。何といっても目を使ってテキストを入力するというのはかなり難しいでしょう。セキュリティ企業の Lookout社が、悪質な QR コードを使って Google Glass を操作できる方法を分析しました。ウェアラブルデバイスは、ユーザーとのインターフェースがこれまでと異なるという性質上、新しい攻撃経路になる可能性があります。Lookout 社によると、QR コードを撮影すると、Google Glass は悪質な恐れのある Wi-Fi アクセスポイントに知らないうちに接続する可能性があります。こうなると、フォトボム(photo-bombing。撮影者の意図に反した被写体が映り込むことを指す俗語)という言葉がまったく新しい意味を持ってきます。Google Glass は一般的な QR コードをすべてサポートしているわけではなく、デバイスの優先 Wi-Fi アクセスポイントの再設定に利用しています。
Google Glass が悪質なアクセスポイントに接続すると、攻撃者はトラフィックをすべて盗聴し、場合によってはユーザーを悪質な Web サイトにリダイレクトします。幸い、Google 社もこの問題を認識しており、すでに修正済みなので、Google Glass で写真を撮るとき、いちいち QR コードを避ける必要はなくなりました。
デバイスを制御する方法は QR コードに限らない……
Google Glass が QR コードによってフォトボムを受ける可能性には注意が必要ですが、モバイルデバイスを悪質な Wi-Fi アクセスポイントに接続させるには、もっと簡単な方法もあります。今では、ほとんどの人がスマートフォンの Wi-Fi 機能を常時オンにしています (Google Glass もです)。つまり、デバイスは接続できる既知のアクセスポイントがないかどうか、周囲の環境を常に調べているわけです。新たに登場したウェアラブルデバイスもインターネット接続を簡単にするために同じように動作すると予測されますが、デバイスが検索するネットワークを簡単な方法で偽装できるソフトウェアも出回っています。WiFi Pineappleという小型デバイスを買えば、必要な操作をすべて自動的に実行してくれます。たとえば、自分のスマートフォンが「myPrivateWiFi」という SSID 名の自宅の Wi-fi ネットワークに常に接続する設定になっているとします。このスマートフォンを持っていった近所のコーヒーショップに、攻撃者が悪質な WiFi Pineapple を取り付けていれば、攻撃者が仕掛けた WiFi Pineapple はスマートフォンが myPrivateWiFi を検索したときに、単にプローブ要求に応えるだけで myPrivateWiFi ネットワークになりすますことができ、その時点から、セッション乗っ取りや盗聴といった典型的な中間者(MITM)攻撃が実行可能になります。この種の攻撃は QR コードを認識しないデバイスでも実行できます。したがって、Google 社が QR フォトボムに対するパッチを公開しても、Wi-Fi 乗っ取りに対する Google Glass の脆弱性は依然として残ることになります。
残念ながら、Google Glass の Wi-Fi 乗っ取りは、すぐに解決できるほど小さな問題ではありません。Wi-Fi ホットスポットを使うたびにデバイスをペアリングするという手間をかけず、すぐに使えるスムーズなユーザーエクスペリエンスが望まれているからです。よく使うアクセスポイントの MAC アドレスと SSID の併用が有効な場合もありますが、ローミングが関係してくると実用的ではなくなりますし、MAC アドレスも WiFi Pineapple で簡単に詐称できてしまいます。
それより現実的な Wi-Fi 乗っ取りの解決策は、ネットワークはどこでも危険なものという前提に立って、すべてのアプリケーションで SSL などの暗号化通信、または VPN 経由のトンネルを使うことです。こうすれば、現在地についても、接続先についても気にする必要はなくなり、安心して日光浴を楽しむことができます。
* QR コードは (株)デンソーウェーブの登録商標です。
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