ダーウィンの進化論を支える原理のひとつは、変化への適応能力が個体の生存率を高めるという説です。マルウェアの作成者も似たようなもので、技術的な環境や市場が変化するなかで生き残るためには、それらに適応していかなければなりません。以前のブログで、Android 版のリモートアクセスツール(RAT)、AndroRAT(Android.Dandro)と、初のマルウェア APK バインダと考えられる機能についてお伝えしました。それ以来、脅威を取り巻く世界では、こうした脅威の模倣と進化が繰り返されています。なかでも、アンダーグラウンドフォーラムで波紋を広げているのが、Dendroid(Android.Dendoroid)と呼ばれる脅威です。Dendroid という名前には、樹木のような形、あるいは枝分かれする構造という意味があります。
図 1. Dendroid の広告バナー
Dendroid は、ユーザーインターフェースやファームウェアインターフェースがわかりやすいとして出回っている HTTP RAT で、洗練された PHP パネルを備え、アプリケーション APK バインダがパッケージされています。Dendroid で使われている APK バインダには、元の AndroRAT APK バインダの作成者との関連性が見られます。
図 2. Dendroid のコントロールパネル
アンダーグラウンドフォーラムの投稿によると、Dendroid の公式な販売者は「Soccer(サッカー)」と呼ばれています。Soccer は、前例のない豊富な機能と、24 時間 365 日のサポート体制を Dendroid の売りとしており、BTC、LTC、BTC-e、またはその他の決済方法による 300 ドル 1 回払いで販売しています。多様な機能の一部を以下に挙げます。
- 通話記録を削除する
- 電話番号に電話を掛ける
- Web ページを開く
- 通話などの音声を録音する
- テキストメッセージを傍受する
- 写真や動画を撮影してアップロードする
- アプリケーションを開く
- 一定期間、HTTP フラッド(DoS)攻撃を開始する
- コマンド & コントロール(C&C)サーバーを変更する
図 3. Dendroid APK バインダ
上述したように、アンダーグラウンドフォーラムの報告によると、このパッケージに含まれる Dendroid APK バインダは、この APK バインダを作成する際に、元の AndroRAT APK バインダの作成者の力を借りていました。
Android プラットフォームで、リモートアクセスツールの進化はいわば必然でした。Dendroid が作成され、この種の脅威がアンダーグラウンドフォーラムで歓迎されていることから、このようなツールを強力に求めるサイバー犯罪者の市場の存在が裏付けられます。PC プラットフォームでも、Zeus(Trojan.Zbot)や SpyEye(Trojan.Spyeye)といったクライムウェアツールキットは、似たような経緯で始まりました。そして、その使いやすさから人気が急上昇し、これを使って実行された犯罪の知名度により悪名を馳せるようになったのです。Dendroid はまだ始まったばかりですが、シマンテックはこれを厳重に監視していく予定です。
常に安全を保つために、ノートン モバイルセキュリティなどのセキュリティアプリをインストールすることをお勧めします。ノートン モバイルセキュリティは、この脅威を Android.Dendoroidとして検出します。スマートフォンとタブレットの安全性に関する一般的なヒントについては、モバイルセキュリティの Web サイト(英語)を参照してください。
* 日本語版セキュリティレスポンスブログの RSS フィードを購読するには、http://www.symantec.com/connect/ja/item-feeds/blog/2261/feed/all/jaにアクセスしてください。